ポリオ&ポストポリオとは

ポリオとは

ポリオとはポリオウイルスの感染によって起こる病気で、抵抗力(免疫力)の弱い乳幼児に好発します。脊髄性小児麻痺とも呼ばれます。日本を含む西太平洋地域、南北アメリカ、欧州では、ポリオ予防接種が徹底しているので、近年新しい発病者はありません。しかし、世界に目を向けるとナイジェリア、アフガニスタン、パキスタンでは今でも新しい患者が発生しています。

グラフ

ポリオの発病

経口感染したポリオウイルスは消化管壁で増殖して、血液中へ進入します。最初の症状は、発熱、頭痛、吐き気、嘔吐、下痢など、普通の風邪症状ですが、数日後に突然手(上肢)や足(下肢)の麻痺が現れます。ポリオウイルスは血液から脳、脊髄に入り込み、脳幹や脊髄の運動神経に感染し、運動神経細胞を壊してしまいます。その結果、これらの神経細胞から栄養を受けたり、運動の命令を受け取っていた手足の筋肉は、神経支配を失って動かなくなります。これがポリオによる麻痺で、この麻痺が後遺症として残ります。ポリオ後遺症は1肢のことが多いが、2〜4肢に見られることもあります。また呼吸障害、発語障害、嚥下障害を後遺症として持つ人もあります。

ポストポリオ症候群(PPS)

手足に後遺症を持ちながらも、元気に日常生活を送っていたポリオ経験者が40〜50歳代になった頃に、新たな筋力の低下や筋肉の痩せ、筋肉・関節の痛み、手(上肢)・足(下肢)のしびれや冷感、息苦しさ、腰痛、異常な疲れ易さなどの症状が出現することがあり、ポストポリオ症候群(PPS)、またはポリオ後遅発性筋萎縮症と呼ばれています。PPSはポリオ後遺症のある手足に発現する事が多いが、これまで正常と思われていた手足にも現れる事があります。また、これまで感じなかった呼吸、発語、嚥下の障害を自覚する人も居ます。

再生した運動神経のオーバーワークと疲弊

幼少時、ポリオからの回復の過程で、生き残った神経細胞から再生した運動神経の枝が、神経支配を失った筋肉を支配しますが、一つの神経細胞が支配する筋肉の数は、正常の場合に比べて5〜100倍にもなります。その結果、動けなくなっていた筋肉が再び活動できるようになったのですが、一方、生き残って助けを出した神経細胞にとってはオーバーワークの状態になります。このオーバーワークの状態が何十年も続いて、ポリオ経験者が40〜50歳代になると、神経細胞は疲れきって働かなくなります。これがPPSの本態です。しかし、ポリオの再燃、再感染ではありません。

どうしたら良いか

<ポストポリオ症候群(PPS)への対処>
 まず、神経内科、整形外科、リハビリ科、内科で、神経・筋肉を専門に診療している医師に相談しましょう。最近は各地にポリオ会ができて、お互いに連絡を取り合っていますので、良い先生が見つからなければ、近くの会にご相談ください。 
PPSと思われる症状が現れた場合には、無理な運動は避けて、安静を保ち、マッサージをしたり、お風呂で症状の出ている部位を温めるのをお勧めします。いたずらに不安がることなく、ゆったりとした気持ちで生活すると、早く症状が治まります。急性期が過ぎて、筋力低下、筋肉や関節の痛みなどの症状が軽減してきたら、少しずつリハビリを始めましょう。ストレッチやラジオ体操、散歩がお勧めです。目安は疲れや痛みが次の日に残らない程度とします。数日から1週間くらい同じ量の運動を続け、調子が良ければ少しずつ運動量を増やします。

慢性期のPPS について

 痛みやしびれのためにからだを長く動かさないと不用性障害(廃用性障害)のために、実際の体力、筋力以上に運動能力が低下し、動きにくくなります。毎日適当に手足を動かすことが大切です。一方、体力や回復中の筋力以上にからだを無理に動かすと過用性障害(オーバーワーク)のためにPPSが再発することがあります。PPSの回復期や慢性期には、これらの不用性障害と過用性障害の両方を予防することが重要です。専門医やリハビリの先生のご指導をいただきましょう。また体調を崩したり、強いストレスを受けると、PPSが再発する事があります。規則正しい、心身ともに落ち着いた生活を心がけましょう。

向山昌邦(神経内科専門医)による


現在位置は…
トップページの中のポリオ&ポストポリオとは